狭間を漂う
「○○くん、このままじゃ何者にもなれずに、身動きが取れなくなるよ」
学部生のころ、院生の先輩に言われた。
何ていうか、生き方の問題、みたいなもん。
自分の使命のようなものが、すなわち生きることと一致しているか。
それとも、それはそれ、生きることは別、なのか。
「あなたはそのどちらでもないというか、どちらなのかをわかっていない」
怒るような口調で、そう言われた。
実際、どちらでもなかったから失敗したことが多いなと思うんやけど。
いまでもそう。
「お前は自分の意見が弱いというか、常に間を取ろうとするよな」って言われることが多い。
正しいとかそうじゃないとか、いろんなことの判断とか。
自分はどちらにも属さないなぁと。
一方ではこっちに魅力を感じるけど、あっちにはあっちの良さもあるからなぁ〜とかって考える。
「いいとこがあんのはわかるけど!でもな……」っていう風にはならない。
どちらにも属していない。
そのおかげでいまでも自分がどの立場の人間なのか、自分でもわからない。
でもそれが自分であることが、最近ようやくわかってきた。
何者にもなれない。
自分以外の何かに、自分の持たないものすべてに憧れのような何かを持っていて。
それは結局一方にとっては正しいけれど他方にとっては正しくなかったり。
ただ、そのどちらの立場にも憧れる。
何かに属する人たちにとっての二人称になることができず、彼らから見ると常に三人称。
自分自身はホンマに一人称のまま。
でも、何かに縛られるよりかは楽しいんちゃうかな?って思う。
あれもいい、これもいい。
あれはかなん、これもかなん。
何かに左右されず、自分の価値基準で物事を決めていく。
味方はいなくても、敵もいない。
ふわふわーっと、何者でもない感覚。
誰かの何かになろうとすることから逃げてるだけかもしれへんけど、そうなってしまうことで得られないものを得られてると思うと、とても幸せな気がする。